「瞼の母」について いまいちど ここで 整理しておきましょう
長谷川伸の 原作によりますと
忠太郎が 料理茶屋水熊を 訪ねたのは
「嘉永二年の秋やや深き頃」と 書かれています。
もう一度確認しておくと
① 料理茶屋水熊です。
水熊屋では ございません。
② 秋やや深き頃 です。
冬では ございません。
■ 第二場 荒川堤
ト書によりますと
「戸田の渡しに近き
荒川沿岸の雨後」
雨のあとでございます。
秋、現代でいうと10月頃ですから
もちろん 雪ではありません。
金五郎 (忠太郎を殺し、下手人を鳥羽田に塗りつけ、おのれは水熊へ強もてで、入婿になる計画を捨てず、鳥羽田の刀を拾って、忠太郎の隙を伺い、忍び寄り刀を擬し、今や刺さんとする)
忠太郎 (心づく)野郎。(金五郎の退路を塞ぎ、じッと見る)
金五郎 (棄鉢になり、闘志が旺
んになる)
忠太郎 お前の面あ思い出したぜ。(斬る気になり、考え直す)お前、親は。
金五郎 (少し呆れて)何だと、親だと、そんなものがあるもんかい。
忠太郎 この野郎、そんなものと吐かしやがる、やい、子はあるか。
金五郎 子だと、そんな者。
忠太郎 ねえな。無えんだな。
忠太郎は 斬って捨てる
■
お登世 おッかさん。
おはま (涙声で)え。
お登世 縁がないってものは、こんなものなのかねえ。
おはま あたしが、わ、悪かったからだよ。
忠太郎 (じッと聞いている。情合いよりも、反抗心が強くなっている)
お登世 何だかこの淋しいところに忠太郎兄さんがいるような気がしてならない。呼んでみようかしら。忠太郎兄さん――忠太郎兄さん。
おはま (力づいて)忠太。(といいかけて、何処にも答えがないので、見る見る力が抜ける)
お登世 だあれも居ないんだわ。(とぼとぼと歩き出す)
おはま (悄然として歩き出し、二人共に遂に去る)
忠太郎 ――(母子を見送る。急にくるりと反対の方に向い歩き出す)
俺あ 厭だ――厭だ――厭だ――
だれが会ってやるものか。
俺あ、こう上下の瞼を合せ、じいッと考えてりゃあ、
逢わねえ昔のおッかさんの俤が出てくるんだ――
それでいいんだ。
逢いたくなったら
俺あ、眼をつぶろうよ。
■
① えんしゅう 番場宿
② 水熊屋
③ ラストの雪
と 桃象的には
突っ込みどころ満載の
ラストショーでしたw