第二場 茶屋宗清の広間
弥生狂言を控えて 出来上がってきた
新作狂言「大経師昔暦」の 本読みの席
万太夫座の若太夫 霧波千寿、中村四郎五郎、
沢村長十郎 仙台弥五七 が
「大経師昔暦」の役作りが 難しいと 話し合っている
そこへ 離れから戻ってきた 藤十郎は、
人間の面とは思えないほどの、凄じい顔をしていた。、
「霧波どの 安堵めされい。
藤十郎、この度の狂言の工夫が悉く成り申したわ」
と云いながら、声高に笑って見せた。
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第三場 都万太夫座界隈 <幕前>
お梶の友人 しず みつ が 都万太夫座
弥生狂言を見にやってきた
宗清の仲居 とめが それを見て
お梶の具合が 悪いから お見舞いをさきにしたらと
話している。
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第四場 都万太夫座
楽屋番の幕前の挨拶、、
そして 大経師昔暦の 一場面が
劇中劇として 展開されます。
坂田藤十郎 (桜春之丞) 演じる 手代 茂兵衛
霧浪千寿( 桜彩夜華) 演じる おさん
中村四郎五郎(桜愛之介) 演じる 大経師以春
仙台弥五七 ( 小桜恋) 演じる 番頭 助右衛門
京の四条烏丸に門を構える大経師では
来る丑年の新暦の売り出しに主の以春をはじめ番頭、
手代衆達が目まぐるしく働いていた。
そこへ以春の妻おさんの母が訪ねてきて、
実家で物入りが続き、利子の返済に父道順が困っているので、
主に内緒で一貫目調達してくれないかとおさんに泣きつく。
おさんは、その事情を手代の茂兵衛に話し、
金策を頼みこむ。茂兵衛は、旦那の印判を
つけばすぐに用意できると安請け合いする。
茂兵衛はこっそり白紙に印判をつくが、
それが番頭の助右衛門にみつかり、
盗人の疑いをかけられ、問い詰められ
茂兵衛を納屋に閉じ込める。
番頭の助右衛門が
茂兵衛の荷物を調べてみたら
高価なかんざしが出てきた
それを 以春に 報告すると
その かんざしは 以春が おさんに買ったものだった。
どうして お前が持っているのだ。
しどろもどろになる 茂兵衛
それを かばう おさん
その様子をみて 以春は
以前から 二人の親密なことに疑いを持っていたのが
確信に変わる。
おまえたちは 不義密通を働いているんだろ
そもそも おさんに恋心を抱いていた茂兵衛は
こっそり おさんが落とした かんざしを拾って
持っていただけなのだが、それも 罪は罪
何も言い返せないまま
以春から 不義密通とされてしまう
江戸時代 不義密通 つまり 不倫が発覚すると
現代とは違い 死刑になる時代。
いくら そうじゃないと言い張っても
旦那がそうだと言えば
不義密通になるという時代なんです。
おさんは 再び納屋に入れられた茂兵衛を
納屋から助け出し 二人で逃げ出したのでございます