なんだって お咲ちゃん 18だって?
お前聞いてたのか
聞き耳 たてなくても こんな狭い長屋ですもの 聞こえますよ
18の娘がいいんなら いけばいいじゃない
どうせ私なんて・・
男同士の 会話のノリじゃねぇか
俺は言ったよ
おはんがいるから俺はいいって
私 知らない・・
あーあー 勝手にしろよ
何かしたんなら せめられてもしかたねぇけど
俺は なんにもしてねぇんだよ
それだったら 何かしたらよかったよ
どうして 逆切れするのよ
泣きだす おはん
泣くことねぇじゃねえかよ
俺が悪かったよ
仲直りして 定次郎が 風呂へ行こうと 外へ出る
「釣忍、まだ捨てねえんだな、
枯れ ちまったものに芽が 出るかよ
新しいの買えばいいじゃないか」
「これがいいのよ。
だって この釣忍
二人で所帯を持ったときに 浅草へ行って
はじめて 定さんが買ってくれたものだもの
それにね 芽が出るって にらんでるのよ」
「 にらんでるねぇ
それじゃあ おはんさんの
ご眼力を 拝見しましょう」
「そうして 頂戴」
■
最近の 劇団都のお芝居では
「ご眼力を拝見しましょう」という セリフは割愛されています。
原作ベースの芝居をしていた時には あった このセリフ
「眼力(がんりき)」とは
事物の理非・善悪を見分ける能力のこと
定次郎は 少しおどけて
おはんが 釣忍は まだ 芽が出ると判断した
その判断力の様子を見ましょう
ということなんです