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Channel: 桃象の観劇書付
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橘劇団+藤乃かな「山名屋浦里」

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小藩の江戸留守居役、酒井宗十郎はは真面目で、しっかり留守居役を勤めようと考えていて、他の留守居役からしてみれば、なにをほざいているか無粋ものめがと鼻つまみものあつかいである。

 

そんなある日、宗十郎は次の寄合は真面目に話し合う会にしようと提案するが、次の会は『江戸の妻』、つまり吉原の馴染みの女を自慢しあうと趣向が決まっていると言われてしまう。

 

もちろん、堅物で通る宗十郎にそんな相手がいないことは分かりきっての提案、彼に恥をかかせるための提案だった。

 

宗十郎は、偶然舟に乗る吉原一の花魁・浦里に出会い、

どうしてもあの花魁を連れて寄り合いにでたいと思い、山名屋に頼みに行く。

 

山名屋の前で店の友蔵から浦里花魁が簡単に会えるものではないと、吉原のしきたりを知らない宗十郎は呆れかえられるが、山名屋の主人に会うことができ、宗十郎が置かれた状況をひしひしと訴える。

 

山名屋の主人は 遊廓の楼主を、忘八と呼ぶんですよ

仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の8つの人倫を失った人面獣心の輩という意味で、情に流されるわけにはいかない。と

 

その時 奥の襖があいて 当の浦里が現れます

 

この場面の浦里の科白が始まった途端、鼻の奥がツンとなる感覚に

襲われる。意気に感じた浦里が宗十郎の頼みを聞き入れる言葉の一つ一つが胸を打ちます。

 

そして、寄合に1人向かう宗十郎。相方を連れてきていないことを

散々なじられ、無礼を謝れと詰め寄られる。

 

そこに現れる花魁道中。ここで物語は一気に盛り上がり、

それまで悪態をついていた連中が浦里の魅力にねじ伏せられていきます

 

最後は宗十郎が持ってきた金子を受け取れないと拒む場面。

ここからは宗十郎の誠実さに惚れた浦里の切なさが浮かび上がる。切々と会いに来て欲しい伝える浦里の言葉に涙が止まらない。

 

 

このお芝居 まず 花魁浦里の 格の高さを 表現できないと

こじんまりしたお芝居になってしまう。

 

また 浦里が金子を受け取れないという場面では 素の「女の子」

になるんですが そのギャップによる かわいらしさ 素朴さを

いかに 表現するかというのが 魅力の一つでしょう。

 

藤乃かなという役者、もちろん綺麗ではあるんですが

綺麗すぎず 泥臭い役  下衆っぽい役にも なりきれる

ものすごさを持っている役者なんですよ。

 

この場面 その人が気品のある最高に格のある花魁 から 

素の田舎娘になって 語るんです。

 

その ギャップたるや ものすごい。

これぞ 「藤乃かな」という 芝居をやってくれまして

すごいもんを 観てしまった桃象でした。

 

 

お芝居のラスト 花魁の三枚歯の高下駄で 外八文字の独特な歩み方での 花魁道中で幕を閉じました

 

ほんと ものすごいですぞ


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