宇野信夫が 新作歌舞伎として書いた脚本を
六代目圓生が譲り受けて仕上げ、落語でも演じられています
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今戸八幡門前の茶店に、今日も同じ時刻に笊屋の安七が姿を見せる。
安七は茶店の娘・おかよや茶店女たちを相手に、
世間話をするうちに自分の身の上を語り始める。
安七には昔女房子供があったが、二人をあいついで亡くし、やけになった安七はばくちで身をもちくずした。
そんな安七を心配した父は、安七に堅気になって商売でもするようにと一両の小判を形見に残して亡くなった。
それを聞いた安七は真人間に戻り、父の遺志を忘れないようにとその小判は使わずに着物の襟に縫いこんで大切に持っているのだと語り、皆にその小判を見せる。
そこへ凧屋に追われて一人の子供が逃げてくる。
凧屋はこの子・小市をつかまえ、「凧を盗んだ」と散々に殴る。
安七が止めに入って事情を聞けば、小市は凧屋が落とした凧を拾ったというのだ。
安七は凧屋に小市に凧をやってくれないかと頼むが、
凧屋は承知しないし、小市に凧をかえすように説得するが、
こちらも離そうとしない。
しかたなく安七は、虎の子の一両を差し出し、これで凧を買うから釣りをくれと言う。二人が争っているのを見かねた茶店の娘・おかよは、小銭をだして小市に凧を買ってやる。
安七と凧やがなぐりあっているところへ、やってきた小市の父・孫市が仲裁に入る。
いきさつを聞いた孫市は息子が迷惑を掛けたことを皆に謝る。
そして浪人になったいきさつを話し、小市を連れて帰ろうとする。
安七は小市を引き止め、形見の一両をもたせてやる。
小市からそれを聞いた孫市は、固辞しその金を返させようとするが、
深編み笠の侍が様子を見ているのに気がつき、急いで立ち去る。
その侍は、商売に行こうとする安七を呼びとめ、どこかへ連れて行く。
てっきり試し切りされるのだと誤解した安七だが、浅尾申三郎と名乗る侍が、「自分は侍同士情をかけぬのが情だと思ってなにもできなかったが、安七が孫市になけなしの一両をやったことに心底感動した」と話すのを聞いて、「情をかけるのに遠慮はいらないはず、あなたのような人間がいるから世の中がつまらなくなる」と酒の勢いで説教し始める。
一時はむっとした申三郎だが、結局安七のいうとおりだと安七に詫び、二人は早速孫市の家へと向かう。
孫市のうちの前では小市がさきほどの凧を嬉しそうに揚げている。安七が孫市の家に入ってみると、なんと孫市はすでに切腹していた。
そばにあった書置きには「行きずりの安七に情をかけられ、わが子一人養うことが出来ない自分のふがいなさをはっきりと思い知った」と書かれていた。
安七は「侍には情をかけないのが情」という意味がやっと分かったと嘆く。
申三郎は小市を自分がひきとって立派に育てようと言う。
安七はすがりつく小市に「おれはお前の敵だ」と泣きながら言うのだった。
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これ 大衆演劇にするには 問題点があるんだなあ
「親切が仇となる」というのは理解できるんだけど
孫市は武士として町人・安七から情を掛けられたことを恥じて
切腹してしまう
今の感覚では わかりにくいよねぇ
侍としてのプライド・・
これを いかに表現するかが 勝負ですなぁ