■ お芝居「残侠破れ傘」
血桜一家二代目 竜二 要正大
竜二の妹 おつや 颯天蓮
二天門の寅五郎 中村直斗
寅五郎の女房 おくま 都祐矢
二天門の若い者 佐吉 鈴峰龍艶
佐吉の女房 おつま 颯天蓮
佐吉の妹 おきみ 花總桃花
二天門の若い者 春吉 花總ひびき
匕首の政吉 三条すすむ
■ 今回 割愛された序幕 浅草の川辺
三社祭の宵宮の日(3月16日)事件は起こった
血桜一家組長 竜三は 今をときめく
東京一の繁華街 浅草六区の縄張りをほしくてしかたがなかった。
そこで、匕首の政吉に依頼をし、
二天門一家が持っている 浅草六区のシマを横取りを計画した。
政吉が見事六区のシマを手中にした時には、
以前から 政吉と恋仲の龍三の 娘おつやと夫婦にさせて
血桜一家の二代目にすると約束をして
親分は政吉にハッパをかけた。
政吉の働きで 浅草六区を縄張りにした血桜一家だが、
浅草六区といえば 演芸場、見世物小屋などの興行問題が
からんでくる。
そこで 全国的に知名度をあげるため 大阪の組との手打ちを
行う事になる。が、その大阪の組から 娘おつやを
嫁にもらいたいとの話が持ち上がった。
浅草六区のシマを本当の意味で手中にするには、
大阪の組が必要。そうなってくると おつやが惚れている
政吉が邪魔になってしまった。
さらには 二代目の跡目問題も約束してしまっている。
そこで、あろうことか 龍三はは政吉の命を狙い、
子分達を使って 闇討ちをかけた。
だが、匕首の政吉、九寸五分の政吉と異名を持つ 政吉。
愛刀 九寸五分の匕首で 子分達を切り捨て
さらには 斬りかかってきた龍三を返り討ちにした。
■ 第一場 地蔵前
草加の宿の 手前の地蔵前
事件から1年が経過をし、血桜一家を引き継いだ二代目竜二と
その妹の おつやの二人は 父 龍三の仇 政吉を捜して
旅をしていた。
ということは 大阪の組との手打ちもご破産になり、
浅草六区のシマも再び二天門一家のものになったのであろう、
東京随一の浅草六区のシマをもっている組の親分が
そうでなければのんびり旅をしているはずなどない。
血桜一家は 組長龍三の死によって、壊滅状態になり、
仇討ち相手を探しての旅をしているようだ。
とはいえ 親のカタキ政吉は かつては おつやの恋した男。
仇でありながらも 愛しい男、おつやの心の中は複雑であった。
二人が地蔵前に差し掛かったとき、おつやの持病の癪・・
兄竜二が 川のせせらぎを耳にして 水を汲みに
おつやを残して その場を離れる
そこへふらりと 登場した政吉。
「おつやさん 久しぶりだったなぁ」
私もヤクザの娘、恋しさよりも 親の仇 政吉を討たねばならないと
おつや 持病の癪を忘れて 政吉に斬りかかる。
やめてくれ おつやさん。
たしかに 龍三親分をやったのは この俺だ。
だが これにもワケのあること。
俺の言う事をひととおり聞いてくれ・・・
と 政吉は、親分との約束したこと、
闇討ちにあったことなどを話す。
そうでなくとも 恋しさと、親の仇だという仁義の間に
はいって苦しんでいた おつやは、
絶望のふちに立たされてしまった。
父 龍三のほうが悪い、そして かつて愛した政吉のほうが正しい。
だが、任侠の世界 そう単純に割り切れるものではない。
複雑な心境をだかえたまま
おつやは 突然 短刀で自分の命を・・
おつやさん かけよる 政吉。
そこへ 竜二が 戻ってきた。
そこにいるのは誰だ。
その場から離れ 物陰にかくれる政吉。
倒れているおつやをみて 事の次第がわかった 竜二。
物陰に隠れている政吉に
死んだ おつやの頭からカンザシを抜いて 投げつける。
政吉は それをよけ カンザシを左手でうまく掴むと
そのカンザシを胸に その場を旅立っていった。