Quantcast
Channel: 桃象の観劇書付
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2923

7月10日「釣り忍」②

$
0
0

定次郎が 湯屋へ出かけようとした時に

行商仲間の為吉と留吉がやってきて

この前 飲んた時 同席になろった お福ちゃん達の話で

盛り上がり おはんが その場にいないことを いいことに

若い子はいいよなぁ など 定次郎が言ったもんだから

それを 聞いた おはんが やきもちを焼き 大騒ぎ

 

そんな 夫婦喧嘩は   仲良い証拠

一段落して 定次郎が  湯屋へでかけていった

 

定次郎が でかけた様子を みとどけて 

越前屋の佐太郎が  おはんを訪ねてきた

 

 

佐太郎と おはんの会話で 明かされる真実

 

定次郎は  日本橋通り3丁目 現代で言う 東京銀座に

店を構える 呉服太物問屋 越前屋の セガレであり

その経営者であった お父さんが亡くなり  定次郎が

店を継承する形となった

 

越前屋は  親族の資本・店舗・事業を共有財産とし

資本金なども 大元方という 総括機関がにぎる中の店舗

 

父が亡くなったことで 大元方 親族の影響度が増し

越前屋を定次郎に継がせることになったが

定次郎は 異母兄弟の 佐太郎に 店を継がせようとし

 

二年前 わざと愚行を起こして 

越前屋から勘当されるようにして 出ていった

 

その愚行の時に  門前町の芸者だったおはんと知り合い

深川の長屋で仲睦まじく暮らしていたのだった

 

□ 

 

佐太郎が おはんに 言う

 

親族が 定次郎の勘当を解き 

越前屋の総領にすることに決まった

佐太郎とて 親族の意向に逆らえるはずもない

 

おはんが 佐太郎に聞く 

もし 定さんが帰らなかったら どうなるの?

 

佐太郎

どうなるかわかりません 

おはんさん 兄さんを 越前屋に返して下さい

兄さんを おっかさんのもとに返して下さい

 

 

もし 定次郎が 帰らなかったら

 

定次郎の父が苦労して大きくした 越前屋の店は

親族が 経営する形となり

 

佐太郎だけではなく 

定次郎の母も 店を 出ていかなければならなくなることは 

おはんにも わかった

 

さらには 越前屋で働く たくさんの奉公人達の生活も

かかっている 重大な話

 

越前屋という 豪商の家

定次郎が そこに戻るということは 芸者上がりのおはんが

そこに入れるわけもなく  

 

定次郎と おはんが 別れることを意味する

 

 

定次郎のため 定次郎の母のため

そして 佐太郎のため  越前屋で働く奉公人のため

 

おはんは  定次郎と別れ 

越前屋に戻すことを承知してしまう

というか 承知せざるをえなかった


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2923

Trending Articles